任意売却と債務整理の関係
住宅ローンの返済が難しい場合の解決手段はいくつかあります。
具体的には、親族からの援助などで返済資金を作ったり、銀行と交渉してリスケジュールする事などがまず考えられます。しかし、返済資金を作る事は必ずしも容易ではありませんし、銀行のリスケジュールも条件が厳しい事が多いです。
したがって、そのような手段を利用できない場合には、自宅を任意売却したり、債務整理によって返済の負担を減らすという解決手段を検討する事になります。
この記事では、任意売却と債務整理について、どのようなケースの場合にそれぞれの手段を利用できるのかにつき検討して行きます。
まず、住宅ローンの返済が難しい場合の解決法として、以下の4つのパターンが存在する事を理解しましょう。
- 任意売却だけで解決できるケース
- 債務整理だけで解決できるケース
- 任意売却と債務整理を併せる事で解決できるケース
- 任意売却も債務整理も必要のないケース(リスケジュール、資金援助等が可能なケース)
このように、任意売却と債務整理は住宅ローン問題の解決手段として密接に関連していますが、取り扱う専門家がそれぞれ異なっています。任意売却は不動産業者、債務整理は弁護士や司法書士が取り扱っているのです。そして、一般に不動産業者は債務整理には詳しくありませんし、債務整理を取り扱う弁護士や司法書士であっても、任意売却の経験がある先生は限られています。そのため、不動産会社に相談に行くと、債務整理で解決すべき案件にも関わらず任意売却を勧められたり、弁護士や司法書士に相談すると、任意売却できる案件にも関わらず競売されてしまう事がよくあるのです。
そこで、任意売却および債務整理の両方の実務を経験した筆者が、ケースごとにどの選択肢を選ぶべきか説明して行きます。
任意売却と債務整理のどちらを選ぶか
住宅ローンの支払いが難しいケースは、以下の3つのパターンに分ける事ができます。
- 住宅ローン以外に借金は無いけれど、そもそも住宅ローンが払えない
- 住宅ローン以外にも借金はあるけれど、その借金の負担が減れば住宅ローンを払える
- 住宅ローン以外にも借金があって、その負担が減ったとしても住宅ローンが払えない
それでは、パターンごとに任意売却・債務整理の選択の仕方を解説してきます。
住宅ローン以外に借金は無い
①の場合は、基本的には任意売却を検討する事になります。そもそも住宅ローン自体が払えない訳ですから、放置しておくといずれ競売されてしまいます。競売でも任意売却でも自宅を手放すという点は同じですが、競売だと任意売却よりも売却価格が安くなったり、プライバシーが守られなかったりというデメリットがあるため、ほとんどの方は任意売却を選択しています。なお、任意売却の際に、リースバックや親族間売買といった手法を用いる事ができれば、自宅の所有権は失うものの、そのまま賃貸する等で住み続けられる場合があります。
ところで、任意売却した結果、売却後に住宅ローンが残る事があります(残るケースの方が多いでしょう)。残った住宅ローンは当然払わなければなりませんが、返済が難しい場合もあります。その場合は、残った住宅ローンについて債務整理を検討する事になります。その際に選ぶ債務整理手続きは、原則としてどの手続きでも構いません。一般には、分割で払って行けそうであれば任意整理、それが難しければ自己破産、自己破産による資格制限などのデメリットを回避したい場合には民事再生が選択される事が多いです。しかし決まりはありませんので、残ったローンの額、自分の返済能力、手続き費用、資格制限などのデメリット等を考慮した上で、どの手続きを選ぶか自分で決める事になります。
住宅ローンが払えなかったのが一時的な事情による場合(例えば、失業により一時的に滞納したが再就職が決まったので今後は払えるという場合)は、任意売却をする必要がない場合もあります。この場合は、民事再生(住宅資金特別条項付)を申立てる事により、自宅を手放さずに解決できる可能性があります。この手続きを利用するためにはいくつか要件がありますが、要件さえ満たせば利用は可能です。ただし、保証会社による代位弁済から6か月以内の民事再生申立てが必要となっており、申立てにはそれなりの期間を要しますので、利用を検討する場合は早めに動く事が大切です。
借金の負担が減れば住宅ローンを払える
②の場合は、任意売却よりも債務整理を検討します。この場合は、住宅ローンだけであれば払って行ける訳ですから、まずは他の借入の負担を減らして、自宅を残す方向で検討する事になると思いますので、その目的にかなう債務整理を選択する事になります。この点、自己破産を選択すると自宅を処分しなければならなくなるので、住宅ローン以外について任意整理をするか民事再生(住宅資金特別条項付)を選択する事になります。
この場合、住宅ローンを支払い続ける訳ですから、債務整理をする事でいかに他の借入への返済の負担を減らせるかがポイントとなります。この点、他の借入が比較的少額であれば、任意整理をして毎月の返済額を抑える事で、住宅ローンが払えるようになるケースが多いと言えます。これに対して、他の借入が比較的多い場合は、民事再生(住宅資金特別条項付)をして借入残高を大きく減らす事により、住宅ローンを払えるようにして行きます。
ただし、民事再生(住宅資金付特別条項付)の場合、利用するための要件がいくつかあって、その要件を満たさない限りは利用する事ができません。要件を満たさない場合は、住宅ローンを除いた借入について任意整理をするか、それだと住宅ローンの返済が難しいという場合には、任意売却を検討する事になります。
借金の負担が減っても住宅ローンが払えない
③の場合は、任意売却と債務整理を併せて行う事になります。この場合、そもそも住宅ローンだけでも払えない訳ですから、自宅を所有しつづける事は出来ないため、任意売却の検討が必要になります。また、他の借入について債務整理をすべきかどうかは、自分の返済能力や任意売却の結果次第と言えますが、債務整理をせざるを得ないケースの方が多いと思います。
一般に、任意売却による売却代金で住宅ローンを完済できるケースは少ないです。そうすると、任意売却後に残る住宅ローンと併せて他の借入もある訳ですから、多額の債務が残ってしまう事になります。ですから、この場合の債務整理は自己破産を選択せざるを得ない事が多いです。しかし、自己破産による資格制限(弁護士等の士業、警備員、保険募集人等の職種が制限を受ける)を避けたいなど、どうしても自己破産したくない理由がある場合には、民事再生を選択する事もあります。
まとめ
このように、任意売却と債務整理は密接に関連した手続きと言えますが、両方の手続に精通している専門家はそれほど多くはありません。したがって、信頼できそうな専門家が見つけられない場合は、両方の手続についてある程度自分で勉強してから相談に行った方が良いかもしれません。ちなみに当社の場合は、任意売却と債務整理を併せて解決する事を得意としておりますので、何も知識がないという方であっても安心してご相談いただける体制を整えております。
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住宅ローンが払えない場合の債務整理について
この記事では、住宅ローンの返済が難しい場合の債務整理について解説しています。任意整理・特定調停・個人再生・自己破産といった個人が利用できる債務整理についての基本的な知識から、住宅ローンがある場合の債務整理による解決法について解説しています。また、信用情報の扱いについても住宅ローンを絡めて解説しています。
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