任意売却について徹底解説
- . 任意売却について徹底解説
- 1. 任意売却とは
- 2. なぜ任意売却をするのか
- 3. 任意売却のメリット
- 3.1. 自分の意志で売却できる
- 3.2. プライバシーが守られる
- 3.3. 退去時期の交渉ができる
- 3.4. 引越し費用が出る事もある
- 3.5. 売却後も住み続けられる場合がある
- 3.6. 市場価格に近い金額での売却が可能
- 3.7. 売却後のローン残債の支払交渉がしやすい
- 3.8. 不動産会社のサポートを受けられる
- 4. 任意売却のデメリット
- 4.1. 売却に必要な手間がかかる
- 4.2. 売却を依頼する業者選びが難しい
- 4.3. 任意売却が成立しないこともある
- 4.4. 競売に比べて引越し時期が早いことが多い
- 4.5. 信用情報に登録される(いわゆるブラック情報)
- 5. 任意売却にかかる費用
- 6. 任意売却と通常の売却との違い
- 7. まとめ
任意売却とは
任意売却とは、銀行などの債権者の承諾を得て、自分の意志で不動産を売却することです。
例えば、住宅ローンを組んで家を買う場合、自宅に抵当権という担保を設定します。担保とは、平たく言えば「借金のカタ」のことです。つまり、万が一、返済が滞った場合、債権者である銀行などは、抵当権を実行して家を競売にかけることで、貸付金を回収するのです。これは、事業目的や投資用目的など、他の借入目的のローンであっても、不動産を担保に借入をしている場合は、同じことになります。
したがって、ローンの滞納が続くと、いずれはを担保を実行され、競売によって強制的に家を売却されます。家に居座ろうとしても、裁判所から執行官がやってきて、最後には強制的に家から追い出されます。
ならば、そうなる前に自分の意志で家を売却してしまおうというのが任意売却です。
なぜ任意売却をするのか
どうせ家を手放すのであれば、競売で売却されるのを待てばよく、任意売却など必要ないと思う方もいるかも知れません。そもそも、「任意」というのは「自分の意志で」ということなので、やりたくなければ別に無理にやる必要はありません。
しかし、任意売却には競売の場合と比較して数々のメリットがあるので、ほとんどの方は競売を待つよりも任意売却を選択しています。以下で、任意売却のメリットを説明していきます。
任意売却のメリット
任意売却のメリットは、競売の場合のデメリットと比較すると、浮かび上がってきます。以下、任意売却と競売の比較です。
任意売却 | 競売 |
---|---|
自分の意志で売却できる | 強制的に売却させられる |
プライバシーが守られる | プライバシーは期待できない |
退去時期の交渉ができる | 最後は強制的に追い出される |
引越し費用が出ることもある | 引越し費用は期待しづらい |
売却後も住み続けられる場合がある | 競売後に住み続けることは難しい |
市場価格に近い金額での売却が可能 | 市場価格の5~7割くらいでの売却も多い |
売却後のローン残債の支払交渉がしやすい | 売却後のローン残債の支払交渉が難しい |
不動産会社のサポートを受けられる | サポート体制は無い |
自分の意志で売却できる
任意売却のメリットは、何と言っても自分の意志で売却できることではないでしょうか。つまり、通常の売却とあまり変わりません。
競売の場合は、裁判所によって強制的に売却させられます。気持ちの面で大きく違ってくるので、今後の生活再建への影響が思っている以上に大きいと言えます。
プライバシーが守られる
任意売却の場合は、通常の売却と変わらないので、ご近所に事情を知られることは殆どありません。
競売の場合は、裁判所の執行官などが、調査にやって来て、様々な聴取をされた上、自宅の外観や室内の写真も撮られます。撮られた写真は、競売情報サイトなどで公開されます。他にも、不動産業者や投資家がアプローチをかけてきたり、近隣への聞き込みを行うこともよくありますし、競売代行業者が近隣に物件のチラシを配ることもあります。それだけでなく、高利貸し・占有屋・抗告屋など怪しげな人達が訪問してくることすらあります(法改正の影響で最近は大きく減っています)。このように、競売の場合は、プライバシーは期待できません。
このようなことから、とくに子供のいる家庭の場合は、競売が子供にとっての心の傷となってしまうことも少なくないようです。
退去時期の交渉ができる
任意売却の場合は、通常の売却と変わらないので買主と退去時期の交渉ができます。
競売の場合は、引渡命令という簡単な手続きでの強制執行が認められているため、退去時期の交渉が難しく、最後は強制的に追い出されます。
引越し費用が出る事もある
任意売却の場合は、債権者と良好な関係を保てれば、経済事情によっては引越し費用が出ることもあります。
競売の場合は買受人次第ですが、引渡命令という簡単な手続きでの強制執行も認められるため、引越し費用はあまり期待しない方が良いでしょう。
売却後も住み続けられる場合がある
任意売却では、売却後も住み続けられる場合があります。リースバックや親族間売買といった方法をとる場合です。いずれも、任意売却によって家を売却し、買主から借りて住み続けるという方法です。
リースバックの場合は、業者や投資家が買主となり、その買主に賃料を払って住み続けます。親族間売買の場合は、買った親族から借りるという形になり、賃料をどうするかは、当事者間の話し合いで決めます。
いずれの場合も、売却の際に買戻しを可能とする契約を締結できれば、後に買戻すことが出来ます。
ただし、リースバックは賃料が高額になりがち、親族間売買は住宅ローンの審査が非常に厳しいといったマイナス面もあります。
一方で、競売の場合は、買受人から賃借して住み続けるということは、事実上難しいと言えます。投資用物件でない限り、通常は、賃借権の負担が無いことを前提に買受けるからです。
市場価格に近い金額での売却が可能
任意売却の場合は、通常の売却と変わらないので、市場価格に近い金額での売却が可能です。
競売の場合は、裁判所で売却基準価格を決めて、これを基準に最低入札可能額が決められ、入札を行います。売却基準価格を決めるにあたり、地域差はありますが、競売というだけで7割くらいに減額されます。都心の人気エリアなどでは、市場価格に近い額で落札されることもありますが、それ以外の地域では、市場価格の5~7割くらいでの落札も多いです。
一般に、任意売却の方が、高値での売却となるため、売却後のローンの残金の減額幅も大きくなります。
売却後のローン残債の支払交渉がしやすい
任意売却では競売と比べ高値で売却できますので、債権者は競売よりも任意売却を好みます(高く売れた方が債権者の回収できる金額が多い)。したがって、積極的に任意売却に協力する姿勢を見せ、債権者の信頼を得られれば、売却後にローンが残った場合の支払交渉にも応じてもらいやすくなります。毎月無理のない金額での返済を認めて貰えたり、場合によっては利息や残金の一部をカットして貰えることもあります。
これに対して競売の場合は、債権者との関係が悪化していることが多く、交渉が難航することも多いのです。
不動産会社のサポートを受けられる
任意売却では、通常の売却と同じく不動産会社が仲介するため、不動産会社のサポートを受けられます。当社の場合、売却に関するアドバイスや、引越し先のご紹介だけでなく、債務整理が必要な場合の専門家のご紹介、生活保護申請が必要な場合の申請サポート等、今後の生活再建に向けた様々なサポート体制をご用意しています。
一方で競売の場合は、法律の手続に従って粛々と進められますので、サポートは期待できません。
任意売却のデメリット
任意売却には、上記のような優れたメリットがたくさんありますが、次のようなデメリットも存在します。正しく理解した上で、任意売却をするかどうか判断しましょう。
- 売却に必要な手間がかかる
- 売却を依頼する業者選びが難しい
- 任意売却が成立しないこともある
- 競売に比べて引越し時期が早いことが多い
- 信用情報に登録される(いわゆるブラック情報)
売却に必要な手間がかかる
任意売却の場合は、通常の売却と同じく売却に必要な手間がかかります。
まずは、売却を依頼する不動産業者を探さないと始まりません。依頼する業者さえ見つかれば、基本的にはその業者が、債権者との交渉や販売活動を進めてくれますが、不動産業者とのやりとりや、購入希望者の内見などの際の対応は必要になります。
競売の場合は、裁判所が手続きを進めてくれるので、とくに何もやることはありません。
売却を依頼する業者選びが難しい
任意売却を扱うには、不動産のほかに法律の知識・金融機関・裁判所の実務にも精通してることが要求されます。したがって、扱える不動産業者が限られています。中には、任意売却に詳しくないにも関わらず集客している業者もあり、後々トラブルになる事があるので注意が必要です。
業者の選び方は難しく、一概にこうすれば良いという事は言えませんが、ホームページなどで、任意売却についての情報を詳しく発信している業者であれば、それなりの経験や知識はあると考えられます。ただし、比較的大きい業者の場合は、担当によって能力にバラツキがあるので見極めは必要です。また、弁護士等と連携している業者であれば、住宅ローン以外の借入や、任意売却後に残る住宅ローン債務についても、適切にアドバイスしてくれると思います。
任意売却が成立しないこともある
任意売却のために手間をかけたとしても、債権者などの利害関係人が同意せず、任意売却が成立しないこともあります。とくに、税金の滞納がある場合は、注意が必要です。税金の滞納により差押えられた場合、役所が同意せずに任意売却が成立しないことがよくあるからです。
競売に比べて引越し時期が早いことが多い
一般に、競売よりも任意売却の方が早く終わります。競売の場合は、1年くらいかかることが多いですが(不人気物件だと2~3年ということも珍しくない)、任意売却の場合は数か月程度です。これは任意売却のメリットとも言えますが、早く引っ越さなければならないという点では、デメリットとなる場合があります。
競売により買受人に所有権が移転するまでは、自宅は自分の所有物なので住み続けることができます。その間、住宅ローンは払わないので、実質タダで住めることになり、競売が長引くほどその恩恵は大きなものになるのです。
信用情報に登録される(いわゆるブラック情報)
住宅ローンの滞納が一定期間(3か月が一般的)を超えると、信用情報機関に事故情報として登録されます(いわゆるブラック情報)。これは、任意売却に特有のデメリットという訳ではなく、ローンを滞納したことによるものなので、競売の場合でも同じ事が起こります。
なお、事故情報として登録される期間は5年~10年程度と言われており、その間は借入やクレジットカードの発行が難しくなります。
任意売却にかかる費用
任意売却の場合、仲介手数料や登記費用などがかかりますが、費用は売却代金から清算しますので、持ち出しで払う必要はありません。ただし、住民票・印鑑証明書・固定資産税評価証明書等の取得にかかる代金、債権者への振込手数料、契約書に貼る印紙代などの実費は、ご負担いただくことがあります。
例えば、「着手金」・「コンサル料」などの名目で、事前にお金を払うよう請求する業者も存在するようですが、悪質な業者の可能性が高いので、依頼しない方が無難でしょう。
任意売却と通常の売却との違い
任意売却と通常の売却との一番の大きな違いは、抵当権者や連帯保証人などの利害関係人全員の同意や協力が必要になる点です。それ以外は、通常の売却とあまり変わらず、売買契約の内容や手続きの進め方などの点で、少し違いがあるくらいです。
もし、売却代金などでローンを完済出来るのであれば、通常の売却と何も変わりません。しかし、そうでないケースの方が圧倒的に多く、その場合は、事前に債権者と交渉して、担保を外してもらえるようにしておく必要があります。なぜなら、担保付きを前提に売りに出しても、特殊な場合を除いて買い手が付かないからです(担保を実行されれば権利を失うことになる物件など誰も買わない)。
また、連帯保証人がいる場合は、その同意も必要です。連帯保証人の同意が得られないと、債権者が任意売却を許可しないからです。
一般には、滞納が進むにつれて利害関係人の数は増え、利害関係人の協力を得る事が難しくなります。したがって、なるべく早い段階で任意売却に着手した方が成功率は高くなります。
まとめ
上述したとおり、任意売却には多くのメリットがあり、任意売却をする事は競売によるデメリットを回避する事につながります。ただし、任意売却をするには利害関係人の同意や協力が必要であり、滞納が進むにつれ利害関係人の協力を得る事が難しくなりますので、任意売却を成功させるには早めに着手する事が大切です。
【関連記事】
任意売却について徹底解説
住宅ローンの返済が難しい場合の任意売却について解説しています。任意売却の基本的な仕組みから、メリットやデメリット、任意売却にかかる費用等について解説しています。任意売却を検討する際の参考にしてみて下さい。
任意売却の利害関係人
任意売却においては、債権者や保証人など様々な利害関係人から協力を得る必要があります。任意売却にはどのような利害関係人が存在し、どのような点に注意が必要なのか具体的に説明しています。
売却した家に住み続けられる「リースバック」について解説
リースバックを利用すれば、売却した自宅に住みながらお金を手に入れる事が出来ます。一見すると魅力的な手法ですが、注意点やデメリットも沢山あります。この記事では、リースバックのメリット・デメリット、どんな場合に利用できるのか、利用する場合の注意点などについて詳しく解説しています。
お電話でのご相談は無料です!04-7192-7623受付時間 9:00-20:00 [年中無休 ]
WEBでのお問い合わせはこちら