住宅ローンの返済が苦しいときの対処法
ローンを返済せずに放置するとどうなるか
住宅ローンを返済せずに放置しておくと、いずれは競売にかけられて、権利を失うことになる
住宅ローンを組んで家を買う場合、買った家を担保に入れます。担保とは、平たく言うと「借金のカタ」のことです。住宅ローンの場合は、抵当権という担保権が設定されます。万が一、返済が滞った場合に、債権者である金融機関は、抵当権を実行して競売にかけることで、売却代金から貸付金を回収するのです。住宅ローンを借りる際には、抵当権の設定は必須で、その登記もされます。
したがって、住宅ローンの返済が滞ると、最後は抵当権の実行による競売で、自宅の所有権を失うことになります。
返済が苦しいときの対処法
昨今では、コロナの影響もあって、住宅ローンの返済に行き詰まる方が増えています。これから、返済が苦しいときの対処法を解説していきます。すでに返済が苦しいという方はもちろん、そうでない方でも万一に備えて、どのような対処法があるのか知っておくことは、有益だと思います。
まず、具体的な対処法としては、次のようなものが考えられます。
- 国の融資制度を利用する
- リスケジュール(返済計画の見直し)をする
- ローンの借換えをする
- 債務整理をする
- 任意売却をする
- 何もしない
以下、一つずつ説明していきます。
国の融資制度を利用する
コロナの影響で収入が減ってしまった場合は、以下に紹介する、国の融資制度の利用を検討すると良いと思います。無利子・無担保・保証人不要で利用可能なので、非常に助かります。しかも、1年以内であれば返済を据え置くことが可能です。これを検討することなく、カードローンやキャッシングなど、高金利のローンを利用することは、絶対にやめましょう。
まず、緊急かつ一時的に生活に困っている方を対象とした「緊急小口資金」があります。最大20万円まで借りられ、1年以内であれば返済を据え置くことができ、2年以内での完済が要求されます。
次に、生活再建までの間に必要なお金を貸し付ける「総合支援金」があります。貸付期間は原則として3か月間以内です。月に20万円が上限とされているので、3か月分だと最大60万円借りられます。これも、1年以内であれば返済を据え置くことができ、10年以内での完済が要求されます。
条件を満たせば、この2つを併せて借りることも可能なので、最大80万円借りられることになります。
詳しくは、お住まいの自治体にある社会福祉協議会に問い合わせてください。
リスケジュールをする
リスケジュールとは、銀行などの債権者にお願いして、返済計画を見直してもらうことです。「今は苦しい状況だけれど、返済計画を見直せば、今後は問題なく返済して行ける」という状況であって、そのことを債権者に納得してもらえれば、リスケジュールに応じてくれる可能性はあります。債権者としても、競売などの法的手続きは面倒なので、なるべくそのまま支払いを継続して欲しいのです。
例えば、以下のようなケースでは、リスケジュールを認めてもらえる可能性が高いと考えられます。
- リストラされて今は無収入だけど、再就職先が決まっている
- ケガなどで一時的に休職していたが、回復の見込みが立っている
- 収入が減ったが、家計の見直しを徹底しており、無駄な出費がほとんどない
ただ、「どう頑張っても今後の返済が難しい」という状況の場合や、ギャンブルや浪費などが原因の場合は、リスケジュールに応じてもらえない事がほとんどでしょう。
ローンの借換えをする
住宅ローンの返済が苦しい場合、借換えも選択肢の一つです。今より低金利で借換えが出来れば、利息が下がった分だけ返済額総額が減り、毎月の返済額も減らせることになります。
とくに、2016年2月以降はマイナス金利政策が続いており、その影響で現在では空前の低金利で住宅ローンの借入が可能です。また、ネット銀行の台頭などによる銀行間での競争も、住宅ローン金利の低下に拍車をかけています。
一般に、「残高1000万円以上・残存期間10年以上・金利差1%以上」であれば、借換えのメリットがあると言われていて、聞いたことのある方もいるかも知れません。しかしこれは、あくまでも目安に過ぎないので、実際にシュミレーションをする事が大切です。とくに、借りてからの期間が短い場合には、1%未満の金利差であっても、総返済額を数百万円減らせることもあります。
このように、メリットの大きい借換えですが、金融機関の審査に通過しないと利用できません。何度か遅延していたり、キャッシングの借入額が増えたりすると、審査の通過が難しくなります。したがって、返済が苦しくなる前の段階で借換えが出来ればベストです。例えば、減給や予定外の妊娠など、返済に影響を及ぼす出来事が事前に予測できる場合は、早めに借換えを進めた方が良いでしょう。
債務整理をする
債務整理とは、債務を減額または免除したり、毎月の支払額を調整したりすることで、借金問題を解決する手続きのことを言います。
個人の債務整理では、任意整理・民事再生・破産がよく利用されています。任意整理は、裁判所を介さずに、債権者と私的に話し合うことで解決する方法です。これに対して、民事再生・破産は、裁判手続きによって解決する方法です。
債務整理の中でも、任意整理と民事再生はとくに有効な方法です。破産の場合は、自宅を売却せざるを得ませんが、任意整理の場合は自宅の所有は問題ないですし、民事再生の場合も一定の要件を満たせば自宅を所有し続けることが出来ます。任意整理や民事再生により、住宅ローン以外の返済を減らせれば、その分を住宅ローンの返済に充てられます。
なお、債務整理は、自力でも出来なくはないですが、専門知識が要求されるので、弁護士か司法書士に依頼する方が無難でしょう。
任意売却をする
任意売却とは、銀行などの債権者の承諾を得て、自分の意志で自宅を売却することです。
ローンの未払いを続けると、いずれは競売されて、自宅の所有権を失います。競売になると、競売情報サイトなどに自宅が公開されるほか、入札希望者が近隣への聞き込みを行ったり、裁判所の執行官が調査に来たりしますので、ご近所などに事情を知られてしまう可能性が高いと言えます。また、市場価格よりも安く落札されることがほとんどなので、競売後にローンの残債が多く残ってしまうことが一般的です。
任意売却の場合は、自分の意志で売りますので、通常の売却とあまり変わりません。したがって、ご近所などに事情を知られることは、ほぼありません。また、競売よりも高く売却できますので、その分、売却後のローンの残債が少なくなります。
それと、条件は厳しいですが、親族間売買・リースバックといった方法が利用できれば、売却後も住み続けることが可能です。
何もしない
実は、「何もしない」というのも、方法の一つです。ただし、多くの方にとっては負担のほうが大きいのでおススメはできません。では、なぜ敢えて説明するかというと、上記の方法がいずれもダメで万策尽きたとしても生活を立て直すことは出来るということを知って欲しいからです。よく、「競売で家を売却されたら人生終わりだ」くらいのニュアンスで営業してくる任意売却業者がいますがそれは間違いです。
もし、住宅ローンを滞納し続けて何もしなければ、自宅を競売にかけられ売却代金から債権者への配当がなされます。しかしこれは、裏を返せば自分で何もしなくても裁判所が勝手に進めてくれるということでもあります。また、競売の場合は手続きの根拠になる法律がキチンとあって、法律で人権が守られている面もあります。つまり、競売を妨害しない限りは、買受人に権利が移転するまでの間、ローンを支払うことなく、実質タダで住み続けられるのです。実際に、不人気な物件だと何年も買受人が決まらないこともあって、その間に転居費用や当面の生活資金などを貯金する方も珍しくありません。
競売での売却額は通常より安くなるため、競売後にローンの残債が残る事がほとんどです。これが払えなければ、通常は自己破産などの債務整理手続をします。債務整理には費用が掛かりますが、「法テラス」を利用できれば安く済みますし、状況によっては費用を免除してもらえることもあります。中には、債務整理をせず借金の時効を待つという強者も存在しますが、銀行口座や給料などが差押えられるリスクがあるので、素直に債務整理をした方が安全です。
競売後の生活についても、必要に応じて生活保護を利用するなど、生きるための手段は必ずあります。日本の憲法では生存権が保障されており(憲法25条)、お金も家も無くなったとしても国を頼ることが出来るので、生活に困ることはあり得ないのです。
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