不動産売買にかかる仲介手数料について

宅建業者に媒介を依頼して不動産を売買する場合、通常はその宅建業者に報酬を支払う必要があります。この報酬は「仲介手数料」とも呼ばれています。

お客様にとって、宅建業者に支払う報酬は大きな関心事だと思います。

しかし、報酬についてしっかりと説明しない営業担当者は意外にも少なくありません。そような営業担当者に当たると「仲介手数料は売買価格の3%+6万円と消費税です」としか説明してくれません。業者が報酬を請求できる要件、報酬の発生時期や支払時期、報酬の返還を受けられる場合等にまで踏み込んだ説明がないため、後に報酬をめぐってトラブルになるケースが見受けられます。

そこで、この記事では宅建業者の報酬について詳しく説明して行きますので、是非ご参考になさって頂き、報酬をめぐるトラブルに巻き込まれないようにして下さい。

仲介手数料の計算方法

宅建業者が媒介をした場合に請求できる報酬の上限は、宅建業法46条と国土交通省の告示で以下のように決められています。

取引価額報酬(消費税込み)
200万円以下の部分取引価額の5.5%
200万円を超え400万円以下の部分取引価額の4.4%
400万円を超える部分取引価額の3.3%
(注意)取引価額は消費税を含まない物件本体の価額で計算します

注意すべきなのは、決められているのは、あくまでも報酬の上限であるという事です。すなわち、上限額の範囲内であれば自由に報酬額を設定できる事になります。したがって、良心的な宅建業者であれば、例えば売主・買主が既に決まっているなど、通常よりも媒介業務の労力が少ない場合には、その仕事量や責任の負担に応じた報酬のみを請求するはずです。

さて、上記の報酬額票に基づくと、例えば不動産を3000万円で売却した場合の報酬額は、以下のような計算になります。

取引価額報酬額(消費税込み)
200万円以下の部分200万円×5.5%=11万円
200万円を超え400万円までの部分(400万円-200万円)×4.4%=8万8千円
400万円を超える部分(3000万円-400万円)×3.3%=85万8千円
報酬合計11万円+8万8千円+85万8千円=105万6千円

計算すると報酬額は105万6千円になります。宅建業者が売主・買主の両方から依頼を受けた場合は、売主・買主の両方に対してこの金額を請求できる事になります。反対に、宅建業者が売主・買主のどちらか一方だけから依頼を受けた場合は、依頼を受けた方にだけ請求できる事になります

なお、報酬額を計算する場合、実務では下記の速算式を利用するのが一般的です。上記のように、3つの式で計算した額を合計するという計算方法でも良いのですが、計算が少し面倒くさいと言えます。速算式を覚えておくと、もっと簡単に素早く報酬を計算できるようになります。

速算式
報酬額=取引価額×3.3%+6万6千円

この速算式の意味するところは、次のような内容です。

速算式では、まず取引価格全体に3.3%を掛けて報酬額を出しています。しかし、これだけでは報酬額が少なく計算されてしまいます。上記の報酬額票を確認すると、200万円以下の部分の報酬は5.5%、200万円を超え400万円までの部分は4.4%となっていますので、取引価格全体を3.3%で計算するとその差額分だけ不足するため、差額分をプラスしてあげる必要があります。そして、その差額分がプラス6万6千円の意味するところです。

すなわち、200万円×(5.5%ー3.3%)+(400万円ー200万円)×(4.4%ー3.3%)=6万6千円となります。

そして、上記と同じく3000万円で売却したケースの場合、速算式で計算すると3000万円×3.3%+6万6千円=105万6千円となります。

建物に消費税がかかる場合の計算方法

報酬額の計算における取引価格は、消費税を含まない物件本体の価格で計算します。不動産売買においては、土地については消費税は非課税ですが、建物については消費税がかかる事があるため、その場合は建物の消費税価格を差し引いて報酬を計算します。

この点、全ての場合に建物に消費税がかかると言う訳ではありません。すなわち、消費税がかかるのは、売主が業者などの課税事業者である場合に限られますので、一般の個人が売主である場合には、このような問題を考える必要はありません。

それでは、消費税がかかる場合に、建物の消費税価格をどのようにして計算するのでしょうか。

まず、戸建てやマンションなど土地と建物を一緒に売却する場合、土地と建物の価格を別々に設定して売りに出す事は少ないと言えます。すなわち、土地・建物全体の消費税込みの価格で売りに出し、その価格をベースに交渉して売買価格を合意します。そして、その後に契約書を作成する段階になってから、建物価格を決めて消費税額を計算するという方法をとる事が多いと言えます。

そして、その際の建物価格は、土地と建物の固定資産税評価額を利用して決められる事が多いと思います。具体的には、次のような計算式により算出します。

建物価格=売買価格×建物の固定資産税評価額÷(土地の固定資産税評価額+建物の固定資産税評価額)÷消費税率1.10

また、これ以外の方法としては、建物価格は建物の簿価とする場合もあります。簿価とは帳簿上の金額の事であり、具体的には、購入時の建物価格から毎年計上される減価償却費の合計額を差し引いた金額になります。

ちなみにですが、トータルでの売買価格が同じであるならば、買主にとっては建物価格が高い方が有利です。なぜなら、支払消費税を多く計上できるため、その分だけ本体価格が安くなりますし、建物価格が高い方が減価償却費も多く計上できるからです。そして、売主の場合はこれとは反対の事が言えます。つまり、建物価格が上がると受取消費税が増えてしまい、その分だけ本体価格を安く売却した事になってしまうのです。したがって、投資用の物件を取引する場合には、契約前の段階で、建物価格の金額について売主・買主間で交渉する事がよくあります。

業者が仲介手数料を請求するための要件

宅建業者が報酬を請求するためには、次の3つの要件を満たす事が必要になります。宅建業者からの報酬の請求に疑問がある場合は、その業者が報酬を請求する要件を満たしているかどうかを確認すると良いでしょう。

  • 宅建業者とお客様との間に媒介契約が存在する
  • 媒介契約に基づく媒介行為が存在する
  • 媒介行為により売買契約等が有効に成立する

宅建業者とお客様との間に媒介契約が存在する

まず、第1の要件として、宅建業者とお客様との間で媒介契約が成立している事が必要です。媒介とは、宅建業者が売主と買主との間に入って、売買契約の成立に向けて尽力する行為の事を言います。

たとえ、宅建業者の紹介などをきっかけに売買契約が締結されたとしても、媒介契約が存在していなければ宅建業者は報酬を請求する事が出来ません

この点、売買の場合は宅建業者には媒介契約書の作成が義務付けられており(宅建業法34条の2)、媒介契約書が作成されていない場合は、その業者は宅建業法違反となります。

しかし、それと媒介契約が有効に成立するかどうかという点は別問題です。すなわち、口頭の合意だけでも契約自体は有効に成立するので、媒介契約書を交わしていなくても、媒介契約が有効に成立することはあり得ます。この場合に、宅建業者にどのくらいの報酬請求が認められるかは、宅建業者が売買契約の成立に寄与した度合いによって判断される事になります。

媒介契約に基づく媒介行為が存在する

第2の要件として、媒介契約に基づく媒介行為が存在する事が必要です。媒介行為とは、宅建業者が契約成立に向けて尽力する行為の事で、現地案内、物件調査、契約条件の調整等の行為を指します。

ただし、媒介行為があったとしても、宅建業者の注意義務違反など媒介行為に不備があり、それが原因で契約が取消されたようなケースでは、宅建業者は報酬を請求できないと考えられています。不動産取引のプロである宅建業者には、媒介行為に高度の注意義務が要求されているからです。

媒介行為により売買契約等が有効に成立する

第3の要件は、媒介行為によって売買契約が有効に成立する事です

宅建業者の行う媒介行為は、売買契約の成立に向けて尽力する行為を意味しており、契約を成立させる事までは含まれていません。すなわち、宅建業者としては、契約成立に向けて必要な仕事をすれば、結果として契約成立に至らなくても責任を問われる事はありません。そもそも、契約は依頼者とその相手方との自由意志によるもので、強制にはなじまないものですから、契約が成立しなくても宅建業者は責任を負わないとされているのです。

その裏返しとして、宅建業者がどんなに契約成立に向けて努力をしていたとしても、結果として契約成立に至らなければ、報酬を請求する事は出来ないとされています

仲介手数料の発生・支払いの時期

宅建業者への報酬は、売買契約が成立したときに発生します。宅建業者が行う媒介とは、契約成立のために尽力する行為の事を言うので、契約が成立したときに報酬が発生する事になるのです。

したがって、契約が成立した後で契約の相手方が債務の履行に応じない(売主が引渡しに応じない、買主が代金を払わない等)場合でも、原則として宅建業者の報酬請求権には影響しません。もっとも、その件につき宅建業者の調査義務違反があったような場合には、報酬に影響することがあります。

報酬の支払い時期については、媒介契約で決めた内容に従います。つまり、宅建業者とお客様との間で媒介契約を結ぶ際に、報酬の支払い時期について話し合う事になるので、内容をしっかり確認してから契約する事が大切です。一般には、①売買契約書を交付する際に50%、決済・引渡しのときに残りの50%を支払うとするか、②決済・引渡しのときに全額まとめて支払うとするか、いずれかのタイプで約定する事が多いです

仲介手数料の返還を受けられる場合

いったん売買契約が有効に成立して宅建業者に報酬を支払ったとしても、何らかの事情で売買契約が解除等になった場合には、報酬の返還を受けられる事があります。以下、報酬の返還を受けられるか否かにつき、具体的なケースごとにまとめました。

手付による解除原則として返還を受けられない。但し、取引の額、仲介の難易度、期間、宅建業者の費やした労力等に応じて一部返還が認められる可能性はある。
住宅ローン不成立による解除返還を受けられる。
停止条件不成就による契約の不成立そもそも報酬の請求が認められない。
売主または買主の債務不履行による解除原則として返還を受けられない。但し、宅建業者に調査ミスなどがある場合は返還を受けられる場合がある。
天災等を理由とする引渡前の滅失・毀損による解除返還を受けられる。
瑕疵担保責任による解除原則として返還を受けられない。但し、宅建業者の調査や重説にミスがあれば返還が受けられる場合がある。
反社会的勢力排除条項による解除原則として返還を受けられない。但し、宅建業者が事実を知っていた場合や知りえた場合には返還を受けられる可能性がある。
売主・買主の合意解除返還を受けられない。
売買契約の無効・取消そもそも報酬の請求が認められない。

仲介手数料とは別の広告費用

宅建業者が受け取る事のできる報酬の上限は、すでに説明したとおり、宅建業法の規定を受けた国土交通省の告示により決められています。この告示による報酬規程には、「依頼者からの依頼により行う場合の広告料金」については、報酬とは別に請求できるとの規定があります。

しかし、依頼者からの依頼があるからと言って、どんな場合でも報酬とは別に広告料の請求が認められる訳ではありません。この点について判例は、通常の広告については営業経費として報酬に含まれるため、報酬とは別に広告費を請求する事ができないが、通常の営業経費で賄えない程の多額の費用がかかる特別の広告を依頼により行った場合は、報酬とは別に広告費を請求できるといった趣旨のことを示しています。

例えば、レインズやポータルサイトへの物件の掲載、近隣へのチラシの配布などは、通常の広告に当たると考えられますので、別途広告費を請求する事は出来ないと考えられます。これに対して、特別の広告として広告費を請求できる場合というのは、大手新聞などに大々的に物件情報を掲載するなど多額の費用がかかる場合が考えられます。

売買の場合は、宅建業者に対して広告料を支払うことはあまり無いかと思いますが、賃貸の場合は空室の募集に当たり、オーナーから宅建業者へ広告料が支払われる事がよくあります。そして、そのうちの多くは広告料金のルールには違反しているものと思われますが、賃貸の仲介手数料は低廉で労力に見合わない場合も多いことから、事実上は黙認されているような状態です。

仲介手数料とは別のコンサル料

宅建業者は、媒介業務の他に不動産コンサルティング等の関連業務を行う事ができ、そのような業務を行った場合には、別途報酬を請求する事が出来ます。このことは、国土交通省が発表しているガイドライン(宅建業法の解釈・運用の考え方)にも記されています。

ガイドラインでは、宅建業者が媒介業務以外の関連業務を行う場合は、媒介業務とは別に、業務内容や報酬額等を明らかにした書面によって契約を締結する事が要求されています。そして、特に不動産コンサルティング業務を行う場合については、媒介業務との区別を明らかにして、予め契約内容を依頼者に十分説明した上で、成果物を書面で交付する事が要求されています。

例えば、土地の売買の媒介の依頼を受けた宅建業者が、その土地を有効活用するための事業プランを作成するなどと言ったケースでは、媒介契約とは別にコンサル契約を結ぶ事で、別途コンサル報酬を請求できる事があります。しかし、単に物件を調査したり、依頼者の相手方と交渉をしたりする行為は、通常の媒介業務の範囲に含まれると考えられていますので、それについて別途コンサル料を請求する事は出来ません。

宅建業者とのコンサル契約を結ぶ場合には、媒介業務との区別、コンサル業務の範囲・報酬額について納得した上で契約をする事が大切です

まとめ

宅建業者に支払う報酬額は決して少ない金額ではありませんので、媒介契約を結ぶ際には、しっかりと説明を受けて理解する事が大切です。また、報酬についての説明が不十分だと、後にトラブルになる事もありますので、きちんと説明してくれない担当者や業者に媒介を依頼する事は避けた方が無難です。

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